辞めた理由を書いた理由 ⑤ VUCA

最終更新: 2019年7月14日


ROEの追求。


法律を破らない範囲で効率的に投資家の利益が最大化されれば、

それが是となり、正義となる世界観。


この世界観では投資家の意向が反映されやすくなるわけです。

投資家からしたら、


「俺たちはリスクをとった」


ということになるのでしょう。


最初に利益になるかどうかもわからない段階で、


「リスクをとってお金を拠出した、

だから俺たちにはそれ相応のリターンをいただく権利があるのだ」


というのが、投資家たちのスタンスになります。


確かに無から有を生み出すことは、簡単なことではありません。

利益になるかどうかは、やって見ないと分かりません。

100%利益が保証されたビジネスなど、どこにもありません。


少なからず、リスクを冒して、船出をします。

この出航式を行うことができるのは、

最初にその船を作ろうと決めた投資家の存在があるからなのです。


「リスクを負う分、後でいい思いをさせてくれ」


これが投資家たちの言い分になるわけです。


ROEを重視した枠組みの中で、

リスクとリターンの考え方を踏まえて理論を組み立てていけば、

それは投資家の声が反映される論理になっていくわけです。


いわゆる「資本の論理」ですね。



資本の論理


この資本の論理で、注意すべき点は、

現在の投資家が必ずしも創業時に

リスクをとった投資家ではないということです。


上場会社の場合は、株の売買が日々市場で行われております。

ということは、投資家の顔ぶれも日々入れ替わっているということになります。


創業時のリスクをとった訳ではないけれど、

決算期日に株を持っている投資家が議決権を行使することで、

会社の所有者としての立場から、

投資家は経営の人事権を握り、経営に影響力を及ぼします。


日本企業の国内投資家はあまり経営に

口出しすることが長らくありませんでした。


経営者は投資家の意向をあまり気にすることなく

ある意味好きなように企業経営をしていました。


ところが、グローバル化の進展に伴い海外の大口の投資家が

日本企業の株を保有するようになると、必要とあらば、

株主総会の議決権行使という形や株主提案という形で、

物言う株主としてその存在感を強め、経営に口出しするようになってきたのです。


最近では、ガバナンスを強化するという目的で、

社外役員を選任しなければならなかったり、

女性役員を増やそうとする動きがあったり、

企業統治のあり方がますます厳しく求められるようになってきております。


このような流れの中で、

現在の経営者は嫌でも投資家の方を向きながら経営をするようになっていきます。



グローバル化


僕は、上場企業に勤務していた時、

IRの担当で、経営者とともに最前線で

投資家とのコミュニケーションを直接行っておりました。


会社の事業内容、業績、中期計画の見通し、経営課題と事業機会について、

プレゼンテーションをしたり質疑に答えたりしておりました。

なので、投資家たちの考え方や振る舞いを肌感覚を通じて

実際に経験してきました。


2008年9月リーマンショックが起きた時には、

株価が大幅に下落しました。


それまで順調に拡大していた業績がリーマンショックにより、

実需が大幅に減少し業績見通しを下方修正したことを受けて、

当時の大口の株主が市場で株を売却したためです。


株価が暴落すると、今度は国内の個人投資家の方々が黙ってはいません。

普段は全然鳴らない電話が、この時ばかりは一日中、

個人投資家からの問い合わせが後を絶たず、

電話が鳴りっぱなしで、その対応に明け暮れる日々が続きました。


その中には、激昂され感情的になり電話越しに

罵声を浴びせる投資家の方々も多くいらっしゃいました。


「上がると思ったから買ったのにどうなってるんだ!」

「経営者をクビにしろ!」

「リーマンショックのせいにして許されると思うな!」


お金のかかった人たちの感情というのは、

それはそれは強烈なものでした。


今、思い出してもこの時の対応はしんどかったなあ。


このような状況では経営者に対する投資家からのプレッシャーが強くなります。

経営者は状況を打開するための方策を打ち出さなくてはなりません。

経営者は、従業員よりも投資家を見ながら経営をすることになります。

経営者がこのプレッシャーをうまく消化できなければ

その圧は従業員に向かうこともあります。



プレッシャー


このような状況にあらずとも、VUCA(※)と呼ばれる

変化が激しく、不確実、複雑で不明瞭な現代において、

経営者、ビジネスリーダー、従業員は各々の立場で

様々な重圧の元に働いています。


日進月歩で進化するテクノロジー、

グローバル化に伴い多様化する顧客ニーズ、

情報化の進展に伴い変化の激しいマーケット。


複雑で先行き不透明なビジネス環境で、

経営者やビジネスリーダーは高度な経営判断を求められ、

速やかに最適なソリューションを提示していかなければなりません。


このような状況を切り抜けるためには、

目の前で起こっていることをあるがままに観察し

冷静に心を落ち着けて課題に取り組む姿勢が必要とさされると思います。


まさにマインドフルネスが求められているのではないでしょうか。


ところが多くの経営者やビジネスリーダーは、

心を落ち着け自分を最適化するための方法を持ち合わせていません。


例えば、米国ジェネラルミルズ社123人のビジネスリーダーを対象にした調査では

2%の人しか生産性を上げるための時間を確保していないという調査結果があります。


ほとんどのビジネスリーダーが忙しい業務に忙殺され、その流れを止めることなく、

心落ち着かぬまま目の前のタスクをとにかくこなしているわけです。


そのような状態で業務に取り掛かっていても、

一向に生産性は上がらないでしょう。


また、そのようなリーダーの元で従業員は身を粉にして働いていくと、

様々な負担やストレスがかかり、メンタルバランスが崩れ、

生産性は低下し、終いには体調を壊してしまったり、

燃え尽きたり悲惨な結果を招くリスクが高まっていきます。


そのような状況では、ビジネスリーダーがどんなに頑張っても、

従業員のモチベーションは低下してしまい、

組織全体のパフォーマンスも低下してしまいます。


このような状況を打破するためにも

経営者やビジネスリーダーのマインドセットが

変わる必要があるのではないでしょうか。


(※)VUCAは、Volatile,Uncertain,Complex,Ambiguousの頭文字をとったもの。元来は、米国の軍事用語で、リーマンショック以降ビジネスシーンでも使用されるようになった。


辞めた理由を書いた理由 ⑥に続く


僕が上場企業を辞めた理由 ① 変化が喜び



VUCA





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